アメリカ式ピアノ勉強法

  アメリカ式ピアノ勉強法とは?

こんにちは。ピアニストの福山明子です。たまに’アメリカ式ピアノ勉強法’は何ですか?というご質問を頂く事があります。

Ichikawa Piano Schoolでは教材はアメリカで一般的に使用されている'Piano Adventures'という本をお子様にお勧めしております。またLesson Bookと同時に進められるPerformance Book, Popular Book, Technique Bookなどもあります。そしてスターウォーズやハリーポッター、ディズニーの曲が載った楽しい本なども同時に使用します。もしLesson Bookだけでは足りなく基本をもう少し強化したいかなと思った場合には、日本の本を使用する事もあります。Piano Adventuresは全て英語で書かれていて、例え英語が分からず読めなかったとしても、お子様の頃に海外の文字を目にする事は好奇心をより持てる事に繋がるのではないかと考えています。私自身、4,5歳の時に自宅にスヌーピーの英語の本がありました。その頃の年齢に外国の物を目にする事はとても新鮮で、スヌーピーの本を見つけては書かれている意味は分からなくても暫く眺めていたことを思い出します。当教室ではクリスマスの時期にはクリスマスの曲を練習したり、ソルフェージュはゲームのように楽しみながら音感を鍛えたり、英語の歌を習いたい生徒さんには少しずつ発音が習得できるようにレッスンを進めていきます。

アメリカで子供達や大人の方にピアノを教えていて気が付いたことがあります。誰も厳しいレッスンは望んでいないようです。大学院を卒業後は’ピアノを習う事はこういう事だ’と先生として考えていましたが、その後沢山の子供達や大人の方と勉強をしていくうちに自分の教え方を疑い始めました。私の子供の頃どのように先生からピアノを教わったかを思い出しながら教えていましたが、時代は既に変わっている、アメリカは日本と常識も文化も全く違う、アメリカのご両親の希望は私が希望している事とはどうやら全く違うという事に気が付きました。それから’私’ではなく’生徒さん’にフォーカスし始めてみると沢山の新しい事に気が付き始めました。それからは自分自身のピアノを教える方法を完全に変え、ピアノを習う時どこに難しさを感じているのか、どれくらい上達していると感じているのか等彼らの頭脳に入り込み同調し理解するよう心掛けました。それからは生徒さん達は’楽しいピアノレッスン’と思ってくれているようです。もちろんコンクールやピアノの試験などがある場合には別のアプローチの仕方で教えていますが、通常は生徒さん達が難しく感じる度合いを見ながらピアノのお勉強を進めるようにしています。ピアノの勉強は義務教育ではないし、私としては細くとも長く、生活の一部になってくれたら、人生を通しての友達となってくれたらと思いながら生徒さん達と勉強を進めています。(☆コンクールは希望する方には本番で本領を発揮でいるようレッスンを行いますが、無理に出場する事はしておりません。コンクールに参加する事によって負の感情が生まれたり、賞を取りたい演奏の仕方が定着してしまう事を恐れる為でもあります。)

何よりも努力した事、がんばった事、難しい事にチャレンジした事に’がんばったね!’ときちんと伝えるようにしています。アメリカでは子供教育の中で子供が何も努力をしていないのに'Good Job !'という両親がいますが、そのようなコメントは教育には良くない事ですと言われています。みんな分かりますよね、自分で努力をしているかしていないか。少し頑張っただけで’出来たんだ、褒めてくれるんだ~’と思われては困るんです。ある程度私の方からチャレンジをしてそれぞれの居心地のよいゾーンから出て頑張りそれに答えられたら’難しい事だけどとても頑張ったね!’と伝えます。逆に’出来ないっ!’というお子さんもいますがその時には’頑張れっ!’と励まし、チャレンジの程度を低いものへと引き下げます。少しずつですがそれでも最終的には弾けるようになり’出来るじゃない!頑張ったね!’と頑張ったことに対して勇気づけていきます。中学生の生徒さんでも数か月後に5ページくらいの弾きたかった曲が弾けるようになり’達成感を感じる~’なんて言っていました。

日本では間違う事に対してとても厳しいですが、私自身ピアノの間違いを探して修正をしていたらその奥にあるピアノの本当の良さを見つけることが難しくなるので、多少のミスは気にしないよう教えています。それよりピアノの音から何を想像できるか別のアプローチの方法でピアノを勉強するよう心掛けています。音楽は最終的にミスをしているかしていないかではなく、どれだけ’音’にフォーカスされているか、どれだけ想像力のある演奏が出来るかということを人々は聴いているので、出来るだけ早い段階からそこに辿り着けるようなアプローチの方法で勉強を進めるようにしています。

アメリカでの人々に対する接し方、話し方、声のトーン、そして常識は私の中に埋め込まれピアノを生徒さん達と勉強するうえでピアノのスキルを伝えるのと同様にとても重要なものとなっています。これは私が20年アメリカで生活をし自然に身に着いてくれて生徒さん達に提供できる素晴らしい宝物だと思っています。

ピアノを弾く事が苦痛ではなく楽しんで進められて、皆様の一生の友達になってくれる事を望んでいます。