ハプニングだらけ、成長をさせてくれたアメリカという国 vol.24

語学留学、大学、グリーンカード、ピアノ、仕事の20年(インディアナ大学編)

こんにちは。Ichikawa Piano Schoolの福山です。日本のこの関東地方の寒さもあともう少しで終わりそうですね。春になってお花が咲いたりウグイスの鳴き声が聞こえてくるのも待ち遠しいです。

インディアナ大学大学院1年生。この時点でアメリカ生活もかなり長くアメリカ文化や大学の仕組みにある程度慣れてはいるとは思っていても。。。

このような冬の時期のインディアナは雪が断続的に毎日朝から晩まで降っています。朝起きて外を見ると真っ白。ずっと暖房をつけているので乾燥が酷く皮膚はカサカサ。酷いストレスもあり肌はとても痒くどんなクリームを試しても痒い。皮膚科にいくなんてお金が無いので行けません。なのでひたすら肌にいいのか悪いのか分からないクリームをべたべた全身に塗る。朝食を食べてから雪用ブーツ、分厚いコート、手袋、マフラー、ほうき、教科書とお弁当でパンパンに膨れ上がって重たいリュックを担ぎ、外にでて車に積もった雪をひたすら落とす。。。車が雪で滑るのでソロソロと走らせやっと学校に到着。まだ外は真っ暗で生徒も数人しか歩いていません。1人トボトボ音楽学部にある練習室に到着。楽譜を出してコートを脱いですぐに練習。時間が無いんです。多分自分は最低10年は皆から後れを取っているだろう、とにかく追いつかないと。

玲子先生からは毎回のレッスンで素晴らしいアイディアを沢山くれているのに出来ない。あの手この手を尽くして、レッスン時間もかなりオーバーして教えてくれ、私としては努力をしているのに中々出来ない。。。先生はある日、’そんなんじゃピアニストになれないよ’と私に向かって言いました。私は返答することが出来ずただ、ただピアノが弾けない事のもどかしさに苦戦をするばかり。自分に対しての激しいイライラ、沈黙、無力感が続きます。勉強にもかなりの時間が必要、練習にも時間が必要、学校で会う友達とは5分の立ち話が限度。友達からの誘いも全部断り、全ての時間はピアノ練習、勉強、仕事。金曜日にあるマスタークラスで同じスタジオの仲間の前で弾いては大失敗。彼らからは ’この人は弾けない’ というレッテルが又貼られ、それから1週間は続くであろう自己嫌悪。それでも挑戦し続けると、私の口から出て来る言葉も荒くなり嫌味っぽくなり、そんな言葉を聞く友達は嫌悪感の塊の顔をしながら私から遠ざかり。。。頭も心も体も限界でボロボロです。

大学の事務の仕事で唯一話が出来るアメリカ人の友達が出来ました。彼女の名前はジェニファー。私がオフィスで仕事をし始めた時の直接のボスで色々と親切に教えてくれました。彼女はとても控えめなタイプ(アメリカ人にはかなり珍しい)、右の手首にダイヤ、左の手首にはスペードのタトゥーが入っていました。金髪に染めていて煙草を吸うベジタリアン。。。あまり私とは共通点はないようですが彼女の性格はとても穏やかで、私の学校での出来事や人からの差別の話を聞いてくれました。何かあったら彼女に話をしに行くというのが日課になっていました。私がどうしても我慢、理解のできない差別やレッスンでのくやしさ、勉強の過酷さを彼女に話をする、涙をためた目で爆発するように。。。彼女は黙って聞いてくれ、私が食べる時間もなく勉強練習しているのが分かると彼女が作ったスープを持ってきてくれたり、でも私に ’こうした方がいい’ という事は言わず、ただ賛成してくれ、ただ話を聞いてくれました。

こんな状況の中でも私の中で色々と変化が見えてきました。まずは人には悪いことは言わない、人には自分の愚痴はなるべく言わないように。軽く言った事であんなにも嫌な顔をされる、私の人に対する態度や感覚を直さなければいけないと直ぐに思いました。そしてこちらが親切に教えてあげよう、心配してあげようと思っていてもその言葉は相手には迷惑な場合がある、アメリカ文化ではこちらが親切に言っていても相手は教えてもらおうなんては思っていない、迷惑な場合が多かったりします。(日本では親切な事もアメリカでは余計なお世話。)そして嬉しかったこと、微笑ましかったこと、楽しかったこと、経験を前面に出す、相手の感情を感じ取り、言葉を聞き流さずきちんと聞く事を考えながら話をする、そして相手を尊重する、どのような人種宗教の人でも。。。どうやら学校での辛い出来事、勉強練習からでは出てこない、アメリカの常識を学び始めました。大変で辛いことの真っ最中だけど、自分の内面にある軸を正しくする、そんな事が毎日の生活の裏にあって自分の日本での歪んだ常識がくつがえされ、アメリカの正しいものに塗り替えられる、追いつきたいあこがれの人達に囲まれ、教えられ、態度で示され、それは私にとって素晴らしく良い環境だったのだと思ってます。経験しないと分からない、感じ取れない私の感覚の鈍さ。。。もっともっと感覚を研ぎ澄まして、頭を柔軟にしないと。

ある日教授に質問を聞きに行ったらドアの所に、’Back in 5'と書いてありました。’あ~夕方の5時に戻るのか’と思って、5時に戻ったら既に教授は帰宅されたとの事。?何だったんだ、あの張り紙は?後日また教授の部屋に立ち寄り質問を聞きました。そこでこの間オフィスに立ち寄った時に、こういう張り紙があって5時に戻ったら既にいなかったので、今日また来ましたという事を伝えたら、教授は残念のような、思い当たるような顔をしながら私に。。。’あれはねえ~5分後に戻るって事なんだよ、at 5じゃないよ、in 5だからね。’と言われ、うわあああ、たかだかその at だか in だかの差でこんな事になったのかと自分が情けなくなりました。後日、頻繁に使われて聞き流している On Lineと In Lineの違いも学びましたけど、悔しい間違いですよね、あー。

とにかく365日、1日18時間くらいずっと音楽、ピアノの事を考え続けての毎日。大学のエレベーターに乗っている時に目の前に大量の音符がチカチカ見えてくるようになったり、昼寝を練習室でしていたらそこに入ってきた友達が、私が寝ながら指が動かしていた、とも言っていたり。玲子先生のレッスンが終ると先生のピアノに対するプロの意見の素晴らしさ、言葉の重みや意味を考えながら、玲子先生の私なんかとは全く次元の違うピアノの世界に唖然として歩いているといつの間にか知らないところを歩いていたり。

こんな音楽軍隊のような生活にもかかわらず今でももう一度チャンスがあったら同じことをやりたいと思います、絶対。なぜかって?多分経験した事ない酷く痛い辛さだけど、自分には到底追いつけない、追い越せない仲間たちとのピアノ勉強だけど、チャレンジしている事、限界まで頑張っている事が好きだったのかも知れません。でも同じチャンスは来ない、だから1回しかないチャンスを思いっきり格好なんか構わず最大の努力をしてやった方がいいんですよね、きっと。もう直ぐ3月?昨日お正月だったような気がするのですが、今年は自分の中に決めている事があるので(ヒミツです。)絶対実行するっ、と決めています。ではまた次回のお話でお会いしましょう!Have a great week and stay safe and take care!