ハプニングだらけ、成長をさせてくれたアメリカという国 vol.19

語学留学、大学、グリーンカード、ピアノ、仕事の20年(インディアナ大学編)

こんにちは。Ichikawa Piano Schoolの福山です。既にインディアナ州に引っ越しをしてインディアナ州の住民として認めてもらえるよう1年の余分な時間を費やしているところです。(=そうすれば大学の授業料が半分になるから。)

TOEFLの点もやっとクリアし取り合えず英語の問題は終了。この時点でアメリカに9年くらい住んでいて、アーカンソーには日本人が殆どいないし、関わっても1週間のうちに1時間も喋るか喋らないかくらい。両親に国際電話を掛けるのも1週間に1度くらい。それ以外は日本語と関わる事は全くありません。日本人とずっと一緒にいるんでしょ?と思われるかもしれませんが私の場合は田舎町という事でアメリカ社会にドップリ漬かっての9年。それでもまだまだ英語は分からないものです。私の一番得意な英語の分野はリスニング。アーカンソー人達独特の発音に長年聞きなれているせいか?リスニングが一番得意です。多分次はスピーキング。文句を言わないとアメリカ社会ではやってられない為。最後は文法とリーディングがいつも点数が低い。。。英語の教科書は読みやすいけど小説は読みにくい、など色々あります。私自身がアメリカで病気になったり、その請求書を見たりしているのでその関係の英語単語はOK、TVをつけて大体は分かる(リスニングが一番得意な為)けど法律関係の単語は全く分からないなどあらゆる分野で浅くの単語さえもまだまだです。

そしてピアノの勉強。玲子先生は日本人の先生ですが英語と日本語交じりのレッスンを毎回して頂いてました。それはそうと玲子先生からレッスン取り始めのうちに’ベートーベンソナタはどれくらいやってるの?’と聞かれ、’あまり。。。’と私が答えると玲子先生からの返答は、’。。。。。。。。。。。’またしてもピアノのド初心者だってバレた、まあそのうちバレる事ではあるんだけど。ベートーベンソナタを勉強しなければいけないとの事で確か’悲愴’を選んだ覚えがあります。もちろん自分では何を練習しているのか全く分からず、それでも必死にレッスンに行きました。玲子先生は手の広げ方、鍵盤の押し方、指や肩、腕の使い方、体の角度、何より音のきき方を徹底的に教えてくれました。そして毎週金曜日の夕方6時からある教室でマスタークラスがあるから来てみたら?というので正規の生徒でもないのにノコノコと行ってしまいました。インディアナ大学の音楽の生徒達(大学生も大学院生も博士の生徒も全員)が沢山いて、みんな玲子先生のお弟子さんでした。私も一応先生のお弟子さんの1人のつもり。。。

ある生徒が既にピアノの前に座っていて練習をしていました。彼女を見たとたんに人物がとてもキラキラしていて輝いていたのを覚えています。外見はとても可愛らしい人ですが何かがキラキラしている、オーラっていうもの?生徒たちが集まってきたので彼女が気軽な感じで練習をしているのを見てたけど何かが違う。。。上手い、ピアノが非常に上手い。。。

玲子先生がその生徒さんが演奏をする事を皆にアナウンスし、キラキラした生徒が弾き始めました。初めからギョッとしました。ピアノを弾く時の表情がすごく素直に顔に出ている、そして何より上手い。。。30分くらいのシューマンの大曲を全部引き終わって又彼女の笑顔が戻ってきました。ひええええ~、圧倒され続けていました。何がどうなってあんなに上手く弾けるのか。しかも2メートルくらいの距離で見ていて瞬きもしなかったのではないかくらい彼女のピアノに惹きつけられました。。。それから玲子先生が始めからシューマンのその曲の作り方を生徒たちの前で教え始めるのですが、どの生徒も食い入るように一言でも逃すまいとして必死に聞いています。それが続く事1時間半くらい。クラスの終わりくらいに他の生徒が’そこの人は誰?’と私を指さしながら玲子先生に聞いています。先生は’Ah, She is with me!'と意図も簡単に私の説明をし、怪しまれることなくマスタークラスに参加する事が出来ました。クラスは金曜日の夜で私は夕方まで仕事をしていたのでクタクタですがスッゴク新鮮で初めてのマスタークラスに参加し非常に勉強になり帰宅しました。アーカンソーのピアノクラスでは味わった事がなかったマスタークラス。ただ居ただけなのに、誰とも喋ってないのに、興奮と嬉しさで一杯でした。さすが、インディア大学だなあ。。。。。

次の年のオーディションに向けての練習はベートーベンソナタ、ショパンのバラード、そしてバッハのパルティータを選びました。玲子先生との緻密な練習が毎週のように行われました。録音機材を先生のオフィスに用いれ、録音してよいかの許可をもらい、玲子先生からのレッスンはしばしば1時間半にも及び先生はこのド初心者に必死に教えてくれました。

今からだから分かる事なのですが。。。ピアノって弾けるだけの問題ではないんです。インディアナ大学大学院レベルではその弾けている’裏’のカラクリがとても重要になってくるんです。カラクリをあの手この手を使ってとても丁寧に細かく教えてくれるのが玲子先生、頭ではわかっているようでまだまだ実行には移せない(実際にその通りにピアノが弾けない)のが私、情報はあるけれどその情報が頭の中でバラバラになっていて自分だけで曲を作るなんてことはまだまだ先の事。沢山ある最終目標の中でも一番手前にあるものは、’その音はどうやって作られているのか’。。。ピアノや音楽の分野ではない人には???だと思います。しかしピアノを無意識に何も考えないで1音でもならしてみるとそれなりの意味のない音が出てきます。たったの1音でさえも意味のあるように弾こうとするとそのような音になるんです。聞きわける事は簡単です。ただその1音があれだけの何億という音のつながりになってくると話は別。。。特にピアノは押せば勝手に音がなるので弾く事だけは簡単でパラパラとつい弾いてしまう、そこが問題なんですよね。だってただ弾くだけなら別に大学院まで行く必要もないし何のために学校に行ってるのかじゃないですか。ピアノを愛し楽器、音楽、作曲家を追求し続ける事でピアノの音色が変わってくるんです。つじつまのあった1音が次第に1フレーズが意味のあるものになる、それもやっとだけど。それから1区切りのところまで何とか。。。という感じで上達すればいいんだけど。そして何より人間の意識ってすごく音に反映するんです。。。(この事はかなり後になって分かる事です。)

ピアノのレッスンは受けてはいるもののまだ頭の中では全く整理されていない感じ。練習に疲れ果て、玲子先生の言っている事を本当に自分でやっているのか分からなくなって、生徒の演奏を聞きに行く事にしました。インディアナ大学にはリサイタルホール、アワーホール、フォードホール、ミュージックアートセンターと4つの巨大なリサイタルホールがあります。毎日午後から夜の11時まで断続的にプロの演奏や生徒の演奏が引っ切り無しに行われています。ピアノの博士の人の演奏でも見てみよっとという気軽な気持ちでフラフラとホールに行き演奏を聞き始めると。。。んんん???あ~あ~あああ~こういう事なのか、玲子先生が言っていたことはっ!!!上手い生徒の演奏を見る事で瞬間に分かりました、玲子先生の言っている事が、やっと。。。(遅いんじゃない?分かるのが。)目てみる事によってやっと一つだけだけど辻褄があった気がしました。それを早速練習室に戻って自分のピアノ練習でもやってみる。。。と、出来るようになったんです、ほんの少しだけだけど!でも練習をしているうちに又分からなくなってくる。さっきの感覚を思い出しながらまた挑戦。。。

そうやって人の演奏をホールで見たり、マスタークラスでも友達の演奏を見ては自分のピアノに反映させたりと蟻が一歩進んでいるような速度で上達し始めました。でもです。次の週のレッスンには上達したところ、玲子先生が教えてくれている事を理解している事をピアノを通して証明しなければいけない。仕事を8時間しながらの練習は非常に大変で、ある時は時間がなくどうしようもないのでYoutubeのビデオで有名なピアニストが自分と同じ曲を弾いていたらそれを真似て練習してみたり。その後にレッスンでそのように弾いてみたら玲子先生にカンカンに怒られては、’あなた一体練習室で何をしているの?’と最悪の言葉を聞く羽目になって、うわっ、まずいばれている、という事もありました。

プロには分かってしまいますよね、生徒が何をしているのかなんて。。。それからはYoutubeは参考程度に見てあとは楽譜に忠実に、玲子先生の言っている事を思い出しながらの練習です。その一方で。。。実はいつも頭の片隅に隠れている私の演奏悪魔がいます。玲子先生に自分のピアノを見てもらいながらもいつもその悪魔と戦って話をしているのです、人前での緊張の話です。。。

インディアナ大学大学院レベルでの勉強がしたい為にインディアナまで引っ越しをし、練習も本格的にし始めました。オーディションもかなり近づいています。でもどうしても乗り越えられないもの、人前で演奏する事による緊張です。次回はそのお話も含めその後のストーリーを続けていけたらと思います。今頃インディアナ州は大雪だと思います、懐かしいなあ、雪の中をひたすら音楽学部に向かってトボトボ歩きながらインディアナ大学の生徒にどうしてもなりたいと心から願っていた毎日。。。インフルエンザが流行っているようなので皆様体調にはお気をつけて下さい。では次回のお話でお会いしましょう!Have a nice day, and stay safe and healthy!